過激な方法や誤ったダイエット法は、体にとってとても危険! ここでは、ダイエット博士が正しい方法や間違った方法をご紹介します。

ダイエット博士のQ&AHakase

 
死の四重奏という言葉をご存じかな。死の四重奏とは、突然死を招く可能性のある動脈硬化の危険因子を4つ集めたもの。その4つが、肥満糖尿病高脂血症高血圧じゃ。ちなみに、肥満以外の3つの因子も、肥満によって引き起こされた生活習慣病(古い言い方は成人病)である。さらに、喫煙という因子が加わると死の五重奏と呼ばれ、動脈硬化の危険がさらに高まる。
中でも、洋なし(皮下脂肪)型よりリンゴ(内臓脂肪)型の方が、肥満度が軽いうちからでも生活習慣病にかかりやすいので要注意じゃ。
 
 
肥満が原因で起こりやすい病気(標準体重の人を1としたとき)
・ 糖尿病 ・ 高血圧 2.5
・ 肝硬変 ・ 虫垂炎
・ 胆石症 ・ 慢性腎炎
・ 脳出血 1.5 ・ 痛風 2.5
・ 心疾患 ・ 関節障害 1.5
・ 不妊症      
なんと、こんなに高くなるのじゃ。
 
 
<糖尿病>
肥満と最も密接な関係にある病気のひとつが糖尿病じゃ。
肥満の人が糖尿病になりやすいのは、太っているとインシュリンの働きが弱まり、血糖値が下がりにくくなるからじゃ。
血糖値がうまく下がらないと、必要以上にインシュリンが分泌される。その結果、体内が高インシュリン状態になり、体脂肪がますます作られてしまう(インシュリンの働きのひとつに'体脂肪の合成'という厄介なものがあるのじゃ)。従って糖尿病になると、やせなくてはならないのに、ますます太りやすくなってしまうのじゃ。
このように糖尿病になってしまってからでは遅いので、いま肥満であるならダイエットをする必要があるな。標準体重に戻せば、再びインシュリンの働きが強まり、きちんと血糖を下げるようになり、糖尿病の心配はなくなるのじゃ。
 
<高脂血症>
一般に、肥満になると中性脂肪や総コレステロール値が上がり、血管をきれいにする善玉コレステロールの値が下がる。
「糖尿病」の項で言ったように、高インシュリン状態になると、肝臓で中性脂肪の合成が進む。それによって、血液中の中性脂肪も高値を示すようになる。また、コレステロールが多過ぎると、血管に付着して動脈硬化の原因になるぞ。
 
<高血圧>
肥満の人が高血圧を発症しやすいのは、塩分が関係しておる。これは、食べ過ぎによる塩分の摂り過ぎが原因じゃ。
また、食べ過ぎると血液中の糖分を脂肪に変えるために、インシュリンの分泌量が多くなる。インシュリンには、また困った働きがあり、体内のナトリウムを体外に出しにくくするのじゃ。
このように、塩分の摂り過ぎとインシュリンの働きの相乗効果で、ナトリウムが体に蓄積され、むくんでしまい、血管がパンパンに張ってしまう。
さらに、インシュリンは交感神経を刺激。その働きによって血管が収縮し、血圧がますます上がることになる。
また、たっぷりついた皮下脂肪が原因で末梢血管が圧迫されるが、心臓は全身に血液を送らなくてはならないので、自然とポンプの力が強まり血圧が上がってしまう。
これらのことが複雑に絡み合って起こるのが、肥満の高血圧症じゃ。
高血圧の状態が長く続けば、血管もくたびれて伸縮性を失ってかたくなり、動脈硬化を引き起こす。ここから、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの病気が発生するわけじゃ。
 
<脂肪肝>
食べ物として摂った糖質はブドウ糖に分解され、余分なブドウ糖は脂肪細胞や肝臓で脂肪に変わる。肝臓で作られた脂肪は、普通は排出されるのだが、脂肪が多すぎると肝臓に溜まってしまう。これが続くと脂肪肝になる。
脂肪肝で最も困るのはB型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝炎になった時、肝硬変に進行しやすくなるという点じゃ。
肝臓は沈黙の臓器といわれるだけあって、脂肪肝になってもなかなか自覚症状が現れない。重い病気になる前に肥満を改善しておきたいものじゃ。
 
<ガン>
肥満になると発症率が高くなるのは、子宮ガン乳ガン前立腺ガン大腸ガンなどじゃ。
特に大腸ガンは、食べ物と深い関わりがある。
以前日本人には胃ガンが多く、大腸ガンは少ないと言われていた。ところが、食の欧米化に伴って大腸ガンになる人が急増し、現在、肺ガンについで第2位の多さじゃ。
肥満者は食べ過ぎによる脂肪の摂りすぎがあるので、通常より胆汁の分泌量が増える。この胆汁が、腸内の悪玉菌により変性して大腸の粘膜細胞を刺激し、ガンへ導くのではと考えられておる。特に、大腸ガンは肥満している人の中でも、運動不足の人に多いといわれているぞ。
肥満を治すこと、脂肪を摂りすぎないこと、運動量を増やすことが、このガンを防ぐ上で有効であることは間違いないな。
 
<胆石症>
胆石というのは、胆のうに結晶化した石状のものが溜まる病気で、この石が胆のうを刺激して腹痛発作の原因になる。
肥満者にとって問題となるのが、コレステロール結石じゃ。
肥満に伴って肝臓でコレステロールが多く作られるようになると、血液中のコレステロールも高くなる。さらに胆汁中にもコレステロールが余分に排出されるようになり、濃度が高まって結晶化しやすくなるわけじゃ。
 
<呼吸器疾患>
ひとつめが、首に脂肪がつきすぎて気道を塞ぎ、睡眠中に呼吸が一時停止してしまう睡眠時無呼吸症候群。夜間の不眠と周期的な大いびき、目覚める前の窒息感、慢性的な疲労感、昼間の眠気などが特徴で、放置しておくと呼吸停止のため突然死の原因になるぞ。
ふたつめが、ピックウィック症候群。重度の肥満になると、胸部や腹部に脂肪がたくさんつきすぎて、胸の動きが制限される。結果、気道が狭くなり、肺の中で酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかなくなる。そうなると、血液中の炭酸ガスの濃度が高くなり、脳の睡眠中枢が障害されて、日中でもうつらうつらとしたり、すぐに眠りこんでしまうようになる。これが原因で居眠り運転をしてしまい、交通事故を起こすことも。
 
<痛風>
風が吹いただけでも痛むといわれている痛風。患者の99%が男性じゃ。
これは血液中に尿酸が増える高尿酸血症から引き起こされる。この尿酸が、足関節に結晶化して沈着することで、強い痛みを招く。
肥満者では、食べ過ぎの為に、プリン体という尿酸の材料になる食べ物を沢山摂ってしまうから起こりやすいのじゃ。また、肥満は体の中で尿酸を作る働きが高まるうえに尿の中へ尿酸を排出する働きが弱くなる。これらが、高尿酸血症の原因となる。
 
<変形性関節症>
重い体を支えていた為に足に負担がかかってしまい、関節の中の軟骨がすり減ってしまう病気。膝関節や股関節などに発病し、痛みのために歩くことさえ困難になる。この病気は女性に多く、特に60歳前後から患者数が増える。
 
<接触性皮膚炎>
歩く度に、太ももや脇の下が擦れて起こる。本来隙間があるべき部分が太り過ぎたためにひどくこすれてしまうのじゃ。ひどい場合には、ここからバイ菌が入って化膿してしまうこともある。
 
<月経異常と不妊症>
肥満女性の約半分が、無月経や過少月経などの月経異常を訴えている。
月経は卵巣ホルモンによって調節されているが、肥満になるとこれをコントロールしている脳のシステムがうまく働かなくなる。また脳から命令を受ける卵巣も、太り過ぎにより卵巣被膜が厚くなるなどの理由で、機能不全を起こしている場合もある。
肥満が不妊を引き起こすいちばんの原因は、肥満による無排卵性月経じゃ。生理はあっても排卵は伴わないのだ。卵巣から出るホルモンの中に、エストロゲンがあるが、肥満になるとこのホルモンの分泌量が減り、排卵がストップしてしまうことがある。
しかし、この場合の不妊は太り過ぎによるものなので、ダイエットをして標準体重に戻せば、エストロゲンの量も上昇して、再び有卵性月経に戻すことができる。
 
<妊娠中毒症>
肥満妊婦は妊娠中毒症の発症率が高いと言われている。
また、妊婦の腹部に溜まった脂肪が胎児を圧迫して胎位異常を起こしたり、お腹の子が巨大児となって離産になることもある。
ちなみに妊娠してから出産するまでの体重の増加は8~10kg程度が理想とされ、太り過ぎは危険と考えられている。妊娠中だからといって、必要以上に栄養を摂り過ぎてはいけないぞ。
 
今日のダイエットは"より美しく"というファッション性が、まだまだひとり歩きしているように思われる。 「私は太っている方がかわいいの。だからダイエットは必要ないわ。」「どうせ頑張ってもやせないから、もう諦めちゃった。」と他人事のように感じていた"肥満の人"は今回の話を読んで、どのように感じたかな。 肥満を改善することによって生活習慣病を予防し、健康的な生活を送る為にもダイエットがどれだけ大切なことか、理解してもらえると嬉しいぞ。 なお、病気について詳しく知りたいという人は、家庭の医学などを読んでいただくと良いな。

 

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